日本で物を買ったりサービスを受けたりすると消費税が課されます。(非課税など消費税が課されないものも一部にあります。)
外国人旅行者が日本で物を買ったりサービスを受けたりしても、課税されます。しかし日本から物を輸出したり外国人旅行者がお土産を持ち帰る場合には、それらは国外で消費されますので消費税が免除されます。この消費税が免除される事を消費税の免税と言います。輸出品等が消費税を免税されるのは、消費税を導入している国が多く消費税の二重課税を避けるために、消費された場所で課税すると考える原則(消費地課税主義)があるためです。
一時期、中国人観光客などによる『爆買い』がよく話題になりました。中国で人気がある日本製品を、中国人観光客が日本で大量に購入し持ち帰る事ですね。外国人旅行者など(非居住者)が、お土産等を免税で購入出来るのがこの『免税店』です。免税店では消費税が免除されるため、消費税の分だけ安く購入する事が出来ます。(残念ながら日本に住んでいる方は、安く購入できません。)そのため、事前に税務署に届出書を提出して許可を受け、販売する際にも特別な手続きをする事が求められています。
これまでの免税店での販売方法は、購入者がパスポートを提示して、購入記録票(誰がどこの店で何をいくつ購入したかが記載された用紙)をパスポートに貼付け、購入者誓約書(購入後に国外に持ち出す事の誓約書)に署名してお店に提出するという方法でした。そして旅行者が出国する際に、空港などの税関でパスポートや購入記録票、購入した物品等の確認を受けていました。
しかし免税店での販売実績と出国時の税関での輸出実績が合わない(免税で売っているのに国内で消費されている)等の理由で、規制が強化されたのが免税手続きの電子化です。令和2年4月から電子化が導入され、令和3年10月以降は電子化をしないと免税販売が出来なくなりました。店舗では、販売手続きの電子化に対応したレジを導入や届出書の提出が必要になります。コロナ禍で免税店を休止している場合などは、免税店を再開する際にこれらの対応が必要となりますのでご注意ください。
電子化によって、免税店での販売情報が空港等の税関に送られる事になりました。そのため、免税店ごとに販売実績と輸出実績の照合が容易になり、ズレを把握される事になります。ズレが大きい店舗ほど、特別な税務調査の対象になると考えられます。しっかりとした体制を整える事で、特別な税務調査の対象になる事を避けていきましょう。
消費税の納税額の計算方法が本則課税の場合、売上で預かった消費税と仕入や経費で支払った消費税の差額を納税します。もし仕入や経費で支払った消費税の方が、売上で預かった消費税より多い場合には、差額が還付されます。免税販売の場合は売上で預かった消費税が0円なので、仕入や経費で支払った消費税がほぼ全額還付されます。下記の具体例を見て頂くと分かりやすいかもしれません。
※具体例
①まずは消費税が無いと仮定します。売上が100万円で仕入が90万円だと利益は10万円になります。(税抜経理の場合も同じですね。)
売上 100万円
仕入 90万円
利益 10万円
②次は消費税が10%で税込経理の場合です。売上が110万円(税込)で仕入が99万円(税込)だと利益は11万円になります。
売上 110万円 10万(消費税)
仕入 99万円 9万(消費税)
利益 11万円 1万
消費税が上乗せされたら利益が増えている様に見えますが、売上の消費税10万円と仕入の消費税9万の差額1万円を納税します。そうすると手元に残るのは10万円で、①の場合と同じになります。
③最後は消費税が10%で免税販売の場合です。売上が100万円(免税)で仕入が99万円(税込)だと、利益は1万円になります。
売上 100万円 0万(消費税)
仕入 99万円 9万(消費税)
利益 1万円
仕入で消費税を払っているのに、売上で消費税をもらっていないので、利益が1万円に減っている様に見えます。売上の消費税は0ですが、仕入の消費税9万の還付を受けられますので、利益1万円と還付される消費税9万円の合計が10万円で①の場合と同じになります。
★同じものを同じ額で仕入れて売った場合には、免税販売でも課税販売でも、手元に残るお金は同じになります。
免税店で販売をすると、一度国に納税された税金を払い戻す事になります。正しく計算して還付されるのであれば問題ないですが、計算を間違えていたり不正に還付をされたりしない様に、チェックが厳しくなるのは、容易に想像出来ますよね?従って消費税の還付を受ける場合には、税務署に根拠資料の提出を求められる事がとても多くなります。また税務調査の頻度も、一般の事業者とは全く異なり、毎年の様に調査を受ける事になります。消費税の還付を受ける場合には、必ず税務調査が行われると考えてください。また調査で間違いや不正が指摘されれば、その分の消費税だけでなく加算税等も上乗せして納税する事になります。当事務所では、税務調査への豊富な対応実績を元に、調査で指摘を受ける事が無いように、お客様の店舗の販売体制・経理処理を整えるサポートを行っています。
コロナ禍によって、訪日外国人によるインバウンド消費も大打撃を受け、免税店の多くは日本人向けの販売に注力したり、閉店するなど大きな影響を受けています。コロナが収束するまでは、訪日外国人観光客数も低空飛行と思いますが、アフターコロナを見据えて、インバウンド消費で業績拡大を目指しませんか?当事務所では、免税店を経営する事業者様のために、届出書の作成サポートから、日々の販売業務、免税店特有の経理処理、税務調査対策まで、幅広く対応が可能です。免税販売店を経営されている方やこれから開業される方は、是非当事務所にご相談ください。